読書感想文を書くための本の読み方

9月1日の日曜日。夏休み最終日。中学生の弟に読書感想文の添削を頼まれる。

感想文の賞などの一切を受賞したことの無い私ではあるが、あの頃(自分が中学生や高校生の頃)には見えていなかった、言えなかったことに何があるだろう。今、一冊の本を読み、その一冊の読書感想文を書くとしたら何を大切にして書くだろう。弟の感想文を読みながら、単なる表現の添削に終わらない読書感想文の書き方について、思い返し考えたことを記したい。

 

読書感想文の書き方について調べれば、大抵は次の趣旨の文が見つかる。

  • 読書感想文は、本の内容(あらすじ)紹介文ではありません。自分の体験や考えを書きましょう。
  • 感動(感心)した箇所について、その理由を自らの経験をもとに考え、書きましょう。

最もなことであると思う。ただ、これらは多くの中学生や高校生は誰かから聞き知っていることであり、少なからず心掛けているように思える。寧ろ、そうして書いた自分の読書感想文にどことなく物足りなさを感じているのではないか。しかしその物足りなさを掴みきれず、その場に滞留させられてしまうことに耐え切れず、一先ず書いたものを提出してしまっているのではないか。

読書感想文を書くことの前進を阻んでいるもの。それは、読書感想文の「感想文」でなく「読書」の方にあるように思える。上記の書き方指南は「感想文」の書き方については親切であるが、「読書」の「感想文」としては不親切な部分があるように思う。つまり前者については、自分の体験や考えを書けば良いというものでもないということ。後者については、そもそも本を読んで感動することは容易ではないということ。前進を阻むものはこのように、それぞれの指南にそれぞれの形で立ち現れているように思う。

まず前者について。自分の体験や考えを書くように言われたからといって、本の内容に準じた自らの体験を書けば良いというものでもないと思う。というのも、もしそれだけで済むのなら、別にわざわざ本を読む必要などないからだ。書きたい自分の体験だけを書けば良いではないか。

次に後者について。単純な話、それほど頻繁に感動は訪れない。訪れたらそれで良いのだが、訪れなかった場合は、やむを得ず一般的に褒められる箇所を引用してしまうのではないか。決してこの行為自体を咎めるつもりは無い。ただ、この行為による感想文が結果として綺麗事の寄せ集めになり易いということを指摘したい。というのも、綺麗事は結局、本を読まずとも言えた可能性が高いからだ。はたして感想文に書いたその言葉を言うのに、本を読む必要はあったのか。

というわけで、先の読書感想文の書き方指南は問題が多い。何度も言うが、これら読書感想文の書き方には同意である。しかしこのまま指南通りに感想文を書くと、あまりに地雷を踏みやすい。何より私が、ずーっと踏みっぱなしであったからだ。知らず知らずのうちに。

 

そこで私は、本を一先ず読み終えたときの感想も大事ではあるが、それ以上に読書後に感じる「もやもや」こそを大切にした方が良いように思っている。一冊の本を読んだからこそ現れた「もやもや」。その隠れている正体こそが、感想文の「主題」と成り得るものだと思う。

「主題」は、構成や書き方以上に大切だろう。勿論、構成も書き方も重要ではあるが、それらは型であるので、型の練習をすれば誰でも程よく上達する。しかし「主題」は書き手自身の現れのように思える為、型というものがあるはずが無い。だからこそ「主題」の捻出に自分自身を賭け、世界に対する自分自身の目を少しでも開いていく。そうした読書としての営みを重視した方が良いように思う。すれば、文体も変わっていくように思う。

以下、読書感想文の添削後、「もやもや」について弟宛に送ったメール内容のコピペ。(後日、訂正したい)

 

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◯◯へ

感想文について。もし難しかったら、△△に聞いて。僕にメールしてもいいけど。

 【良かったところ】

◆感想文になっていたところ。

本の紹介文でなく、自分の体験を中心とした、◯◯の感想文になっていたと思うよ。

◆文章構成を意識しているところ。

ただ書き連ねるのでなく、簡潔な書き出し、二つにまとめられた印象に残った言葉を軸に書けていたと思うよ。

 

【もう少しなところ】(主に直したところ)

次の一つだけ。

◆本一冊に対する◯◯の感想が欠けていたところ。

書き出し部分がまさに本一冊に対する◯◯の感想に対応するのだけれど、その最も大切なところ考えている間に力尽きて、本の帯の文を真似てしまったのは今後の頑張りどころだね。

気づいていると思うけれど、実は、感想文の書き出しにあたる、本一冊への自分自身の感想が最も書くのが難しい。ここは、本を読んだ後、よーく考えないと良い言葉が書けないところなのよ。

 

どのようにしたら書けるか。簡単な方法はないけれど、少し助言。 

本を読んだ後のもやもやを大切にしましょう。そこにこそ自分の一番の感想が隠れている。もし、本を読んだ後にもやもやを感じなければ、読み方が悪いか、本の内容が軽すぎる。

もやもやは、本を読んだことで気づかされたことが、今までの自分の考えと違ったり、合わなかったりすると現れる。そうして現れるもやもやが、もやもやなのは、自分のどんな考えと、本の著者のどんな考えとが合わないのかが明らかでないから。だから、よーく考えて、その合わない二つの考えを見つけ出してあげなければならない。もやもやは自分だけのもやもやなので、もやもやの正体がわかるのは自分しかいないのです。

もやもやの正体を暴くには、本をもう一度読み直したり、黙って考えたり、感想を紙に書いたりして、自分なりのやり方で試行錯誤してみる。そうしてもやもやの正体がわかったら、感想文としては殆どお終い。もやもやの正体を知ったことで、変わった自分の考えを書けばよい。ここは特に考えなくとも、書けるものよ。

 

要するに、もやもやを大切にしてください。ということ。そこに逃げずに向き合えるようになれば、他の修正箇所はあったとしても、ずっと良くなると思うよ。

 

おしまい。 

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いつも以上に雑な文章なので、明日にでも書き直します。

 

読書と社会科学 (岩波新書)

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