絵心がある人とない人との違い
絵が上手い人、下手な人がいる。それは勿論、今までどれだけの絵を描いてきたか、トレーニングを積んできたかに依るところは大きい。けれど、また確かに絵を描く素質、絵心の度合いが個々によって異なるとも感じる。
絵心の有る無しを分かつものを才能の一言で終わらせることは出来る。それでも、目の前にあるモノの形や質感や大きさを出来るだけ適確に捉えようと凝視することは、普段は意識には上らない、埋もれてしまっている何かを引っ張りだすようにも感じる。その埋もれている何か、つまり絵心の有る無しを単なる才能という一言で終わらせないものの正体は気になっていた。
「内蔵とこころ」を読んで、「絵を描くこと」が幼児の頃に欠かさず行なっていた「舐める」と繋がっているように思わされた。言葉も話せない、視覚による世界の認識もままならない頃。目の前の世界にいったいどのようなモノがあるかがわからない頃。その頃に行った、舌と口を使いモノを舐めるということは紛れも無く、今、手元にあるモノの形や質感や大きさを捉えるということだろう。
モノの形や質感や大きさを捉えようと凝視することを"舐め回すように見る"と表現することがある。絵心がない、それはひょっとすると幼児の頃に「舐める」ことをしなかった(許されなかった)ことによるのかもしれない。舌が、かつての記憶が呼び起こす。
- 作者: 三木成夫
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